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峠に棲む鬼「イラスト分析24」・・・代表的凌辱場面を考察する(その2) [峠]

一年ぶり以上のご無沙汰です。
竹生島と比べ、こちらの解釈は非常に難しく、難航しておりました。
今後も不定期に更新したいと思います。

「峠に棲む鬼」の主人公である逢魔麻紀子は、男という男に数え切れないほどの凌辱をうけていますが、代表的な描写は下巻の、
(1)竹生島での磔刑を免れた麻紀子が、真庭の前で倉田に奉仕させられ、犯される場面
(2)西独に拉致された麻紀子が、ヨーゼフ・クラインに初めて犯される場面

2カ所でしょう。

記述そのものが短いため、読まれる方によってもさまざまな解釈がされていると思います。
そこで今回は(2)について、このブログなりの大胆な解釈(個人的見解)を述べさせて頂きたいと思います。





<独自の解釈なので、不要な方は以下を「ご覧にならない」ことを強くお奨め致します>




2)のあらましです。

「峠に棲む鬼」東スポ版154回のサブタイトル「「あなたを処刑にー」麻紀子はおびえた。真庭は腹を決めた。」、及び東スポ版155回のサブタイトル「麻紀子を裸にするヨーゼフ。その体位は四つん這いであった。」の場面です。

西独のヘルバルト社に拉致監禁された真庭・麻紀子夫婦、新納の三人は、フランクフルトの古城に幽閉されました。
ヘルバルト社に必要なのは新納だけであり、真庭と麻紀子は新納からガスの化学構造式を引き出すための、単なる道具でしかありません。
いまに殺されることがわかり、真庭は脱出を試みますが失敗し、自分の処刑と引き替えに麻紀子を差し出させられるのです。

場面はそこからのスタートです。




真庭は、椅子に体を埋めた。
虚脱感が深かった。
麻紀子はクラインの部屋に連れ込まれた。寝室だった。シュルツが出ていった。
クラインが何かいったが、麻紀子には理解できなかった。巨漢のクラインが麻紀子を招いた。唇が奪われた。バター臭い舌が差し込まれた。分厚い、長い舌だった。
思う存分、吸われた。
それが終わると、クラインはその場で麻紀子のセーターを脱がしにかかった。麻紀子は立ったままでいた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

ここで、あまり有名ではありませんが、一つの真実があります。
それは東スポ版とそれ以外(ノベルズ及び文庫)の表現が、若干異なる為、意味がふた通りにとれる文章があるという点です。



②(東スポ版第154回)
真庭は、椅子に体を埋めた。虚脱感が深かった。
麻紀子はクラインの部屋に連れ込まれた。寝室だった。
シュルツが出ていった。

①と②を見比べて頂ければわかるとおり、②では「真庭は、椅子に体を埋めた。」と「虚脱感が深かった。」の間には1行分の行間が無く、一連の文章として描かれています。
②を素直に読めば、「虚脱感が深かった。」のは「真庭」だということになります。
先生はこれをノベルズや文庫版で編集し直し、あえて行間を入れました。

もともと「虚脱感が深かった。」のが麻紀子だった為に、読者に「より」わかりやすくする為、努めて1行間を開けたと解釈するのが素直ですが、椅子に(ぐったり)体を埋めるほどの虚脱感を真庭も持っていたとも言えるかも知れません。

いずれにしても、最終的には麻紀子が「虚脱感を持った」のは事実で、一度はわずかでも希望を抱いただけにふたたび男の性交奴隷に戻されることに、「絶望的な」虚脱感を感じたに違いありません。
そのあと「唇を奪われ」、「吸われた」ことで、麻紀子の脳裡にあるエロスのスイッチがふたたび入ってしまい、このあとの展開はみなさまご存じの通りです。



さて次に、このシーンで麻紀子はクラインにキスをされたあと、セーターを脱がされますが、「セーターの下に何を着ていたのか」に焦点を当ててみましょう。

竹生島にスクーナーで拉致された際、麻紀子の服装で確認できるものは、「体が透けてみえる絹のネグリジェ」、「花柄にフリルのついたパンティ」、「ジーパン」、「毛皮のハーフコート」の四点で、すべてが倉田が用意したものでした。
そして、このときより以前の記述では、麻紀子は当然のことながらブラジャーを着用しており(初めて組織に拉致されたときは、組織員の友野に外された記述から、普段からつける習慣があったことは明らか)、竹生島に拉致され、倉田に着替えさせられて以降にブラジャーをしなくなったようです。

これは、性交奴隷である麻紀子にはブラジャーは不要と主人(倉田?)が考え、与えなかったとも解釈でき、この場合、セーターを脱がしさえすれば、すぐにでも美しい乳房を拝み、触ることができたわけです。
凍死の恐れさえなければ、本当は全裸・足枷で飼いたかったのかも知れませんが(その方が家畜として飼われている被虐感が強く、どMの麻紀子を精神的に支配しやすい)、麻紀子の体はそこら中の男たちが狙っており、全裸などでは危な過ぎて倉田としても保険の意味で衣服を着させていたのかも知れません。


クラインに西独に拉致され凌辱された際も、クラインに外された記述がないことから、この時点でも麻紀子がブラジャーを着用していないことは確かなようです。

ちなみに、初めに拉致された際に、麻紀子が身につけていたものは、「セーター」、「シャツ」、「ブラジャー」、「ジーパン」、「パンティ」でした。
それ以外に、本作中で確認できる麻紀子の衣服は、「ジーンズの上着」、「靴」、「パジャマ」、「コート」、「肌着」になります。

さてそれでは、麻紀子のブラジャーはいったいどこに行ってしまったのでしょうか。
ブラジャーばかりではありません。
麻紀子の元々履いていたパンティも、オリジナルはいつの間にか倉田に奪われており、気がつけば、麻紀子は倉田に花柄のフリルのついたものに着替えさせられていたのでした。

一つの推測ですが、倉田は麻紀子に惚れ込んでおり、その「入れ込み」ようから、着ていた衣服さえも愛おしく感じていたことが想定されます。
従って、麻紀子の下着類(あるいはオリジナルの衣服も)は倉田の愛蔵品として、どこかに保管されてしまった可能性があります。
隠すとすれば、奥さんに見つからない場所でしょうから(笑)、隠し場所は関東製薬本社ビル(社長室)、薬理研究所、竹生島、スクーナーの中、バートルの中、社用車のトランク、等に限られますが、物語の流れからすると、可能性が一番高いのは竹生島のどこかでしょう。

あるいは、ひょっとすると、奥さんに見つかるくらいならと、浅間山か阿蘇山にバートルで運んでいって「火葬」にしたのかもしれません・・・(笑えないジョークですが)。




貧血を起こしそうな感覚があった。
また、嬲りものになる。それも、ことばもわからない巨漢の異国人にだ。はてしない凌辱がつづくのだと、意識がずり落ちて行きそうな感覚の中で、そのことを思っていた。
ジーパンを脱がされた。パンティも取られて、その上に手錠をはめられた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

この時点でも、麻紀子は「花柄のパンティ」を着用していたのでしょうか。

いや、倉田にスクーナーで弄ばれたあと、麻紀子は竹生島に上陸しますが、その後の「奴隷男とのセックス」でも、「磔にされる場面」でも、「新納とセックスする場面」でも、さらにはそのあとの「倉田と中垣に、真庭と並んで犯される場面」でもパンティについては何も記述がありません。
あれほど「人妻の白いパンティ」が大好きな先生なのに、麻紀子が衣服を脱がされる場面で、パンティだけが記述にないのです。

そして、決定的と思われる記述がみつかりました。



④男はふたたび伝声管を把った。
「四人分の着替えを、用意しろ。それから、湯を沸かせ。コーヒーもだ」
命じておいて、男はふっと、肩を落とした。
(下巻 第十一章 深まる謎 2項より)

⑤救助された真庭正之、逢魔麻紀子、新納辰吉の三人は船尾近い船室に収容されていた。
そこには湯が用意されていた。体をつけて暖をとるほどの湯ではないが、バスタオルを浸して熱い蒸しタオルで体を拭くと、蘇る気がした。
三人はそれぞれに塩分を落とし、手足を湯に浸して、濡れた服を着替えた。
(下巻 第十一章 深まる謎 3項より)

この④⑤より読み解けるのは、クラインに凌辱された際に麻紀子が身につけていた衣服は、ヘルバルト社の別働部隊によって船上に用意されたものだったのです。



まとめます。
竹生島にいたとき、麻紀子はフリルのついたパンティをもはや履いておらず、ノーブラ・ノーパン状態(上はセーターのみ、下はジーパンのみを着用)で過ごしていました。
これは倉田を初めとする主人たちが、その気になればすぐにでも麻紀子を凌辱できるように、不要な下着は与えなかったのだと思われます。

そして、竹生島を脱出した際に、ヘルバルト社の別動部隊から与えられた衣服の中には、ブラジャーはなくパンティだけがあったのです。

漁船に扮した工作船内に、女物の着替えをいつも用意しているとはあまり考えにくいのですが(しかも寸法も合っているものを用意している)、世界的コングロマリットであるヘルバルト社のことですから、そこは抜群のリサーチ能力を発揮し、麻紀子にちょうどぴったりなサイズの着替えを用意していました(おそらく日本製でしょう)。

ヘルバルト社に幽閉された麻紀子が着ていた服は、このとき着替えた服です。
西独海軍が、潜水艦内で濡れた衣服をご丁寧に洗濯乾燥までしてくれて、それをヘルバルト社まで送り届けてくれるとは考えにくいですし、麻紀子自身が持ち込んだ記述もないので、そう考えるのが妥当です(麻紀子が脱いだ濡れた衣服は、潜水艦の乗組員が麻紀子の匂いを「おかず」にしているでしょう)。

ひょっとすると、ヘルバルト社の別動部隊は、麻紀子だけでなく竹生島に捕らえられている奴隷たち全員の身体的特徴データーを収集し、それにマッチした着替えを船内に用意していたのかも知れません。

「恐るべし、ヘルバルト社」ですね。




クラインは、素裸にした麻紀子を立たせたまま、すこし離れて、観賞した。前から、そして後ろから。
麻紀子は瞳を閉じた。
クラインが背後にきた気配がした。
ふいに、麻紀子は尻をつかまれた。クラインが両手尻をつかんで、拡げた。そうやって、割れ目に舌を入れてきた。
クラインは執拗にそこを舐め、軽く噛み、割れ目から、肛門に舌を這わせた。舐めて、吸い取ろうとしていた。
その愛撫が数分間、つづいた。
麻紀子は、膝をついた。立っていられなかった。
泪が出ていた。
クラインは麻紀子を這わせた。
ことばがわからないから、クラインは監督が素人に演技をつけるように、手足を把って、体位を決めた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

ここでも麻紀子は全裸にされ、全身を観賞されます。
麻紀子の美しさはヨーロッパでも充分に通用する美しさであったわけです。
さすが、寿行作品中「美女」ナンバーワンヒロインだけのことはあります。

さて、このとき麻紀子はクラインの命令が全くわかりませんでした。
クラインは西独人なので喋る言葉はドイツ語でしょう。
このことがあったためか、娘の紀魅は外語大に通っています(専攻は不明)。
ひょっとすると、自らの負の教訓を生かすべく、あるいは例えドイツ人に拉致されても困らないように、娘にはドイツ語を取らせていたかも知れません(紀魅はロシア語は理解できたようなので、ロシア語専攻かも知れません)。

そして、肛門を優しく愛撫されたことのない麻紀子は、そこでも感じる自身に戸惑いながらも、そんな自分に思わず泪を流しながら膝を突いてしまうのが、この場面です。




その体位は四つん這いであった。
クラインはなおも尻から舐めた。その分厚く長い舌は麻紀子の性器にまで届いた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

クラインの愛撫は、まず麻紀子の肛門を舐めることから始まります。
性器ではなく肛門をかなり長い間、舐めつづけるのです。
麻紀子を肛門への愛撫で感じさせようとしたか、クライン自身が肛門好きなのか、理由はいくつか考えられますが、この場合は、少しあとに記述される肛門性交への布石と考えていいでしょう。

肛門と性器の両方を同時に舐めるということは、尻の割れ目を上下に舐めているわけです。
そして、性器ではなくまず肛門から舐めはじめたということは、クラインは間違いなく肛門性交の愛好者で、通常の性交と同じかそれ以上の肛門性交を行っていることが、この動作に表れています。
麻紀子がどんなに美しいからと言っても、肛門は肛門です。
麻紀子が舐めた倉田の肛門同様、そこは汚れています。
いつ大便をしたかもわからず、その段階で舐め回すのは普通かなり覚悟がいります。
そこを舐め回せるというのは、愛おしいから舐められるのだと考えられるでしょう。
クラインは肛門を愛おしく感じるのほどの、肛門性交愛好者だったのです。
そして、麻紀子の肛門をみて、麻紀子も経験者なのがわかったのかも知れません。
いずれにせよ、クラインの愛撫(ご挨拶)の初めての相手は性器ではなく肛門であり、それは愛好者独特の「味見」だったのかもしれません。




麻紀子は床の一点をみていた。
鬼無村消失の謎を追いはじめて、もうどのくらい凌辱されたことかと思った。数えきれなかった。何十人かの男が、縛られた麻紀子を犯しにきた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

ここで、麻紀子自身の記憶を辿る形をとり、麻紀子が奴隷になってからの男性経験が明らかになっています。
「何十人か」ですから、10人から99人までが該当し、一人が二度(以上)していると後述していますので、男たちに射精された回数は20回から198回(以上)となります。

麻紀子が初めて拉致されたのが十一月十五日です。
このときは中垣率いる関東製薬秘密組織の組織員数人に奴隷として仕えさせられました。
奴隷生活の最後は、西独から羽田空港に戻ってきたのが翌年の二月十五日夜ですから、おそらくは赤軍ゲリラに開放されたのが二月十三日でないかと思います。
合計九十一日間です。
その間のうち、例えば一時的な解放や移動などを除く二日に一日を男の性に仕えていた計算としても、四十五日間は男に凌辱されつづけていたのです。
四十五日で、198回とすると、一日平均4.4回の射精となります。
九十一日間のうち、2/3とすれば、一日平均3.2回。3/4とすれば、一日平均2.9回。
いずれにしても、まさしく性交専用奴隷です。
寝る時間と食事の時間等を除けば、一日の大半を男の性に仕えていたことになります。


また、文章中の具体的な記述では何人の男が数えられるでしょうか。

<上巻>
「中垣明」、「(おそらく)友野」、「乗用車の三人の仲間=麻紀子に叩きのめされた三人の男」、「捕らえられた真庭の前で、麻紀子を犯していた男」、「蛇の生殺しは嫌だぜといった真庭」、「麻紀子を猿の女にする話をした男」、「十三人の男たち」、「倉田恵治」、「坂本」の計23人。

<下巻>
「新納辰吉」、「麻紀子の口で射精した男」、「クライン」、「麻紀子を拷問した男」、「シュルツ」、「警備の男」、「四人の警備員」、「射殺された二人の男」、「ポーカーをしていた三人の男」、「麻紀子を馬乗りで犯していた男」、「岩田」、「杉本」、「小川」ですが、「四人の警備員」と「射殺された二人の男」・「ポーカーをしていた一人」、「麻紀子を馬乗りで犯していた男」はおそらく同一人物なので、計13人となります。

合計36人です。
36人が二回射精すれば72回となり、45日間とすれば一日平均1.6回。九十一日間のうち、2/3とすれば、それでも一日平均1.2回になります。

奴隷となっている間、麻紀子は毎日最低でも1.2回の射精を受けていたわけです。
それこそ、膣に射精された精液を拭う間もなく、次の男に仕えさせられていたことになります。
上巻にも記載があるとおり、おそらくはつねに全身精液まみれだったでしょう。

さらには、このあとにも再度麻紀子は組織に捕らえられており、中垣と八人の組織員、倉田恵治に二・三日のうちに計十人に犯されています。

そして、最後にトドメの記述です。



⑨麻紀子がここ、鬼無村に帰省したのが、十一月四日だった。村人消滅を知り、捜査にかかってから三ヶ月以上になる。その間の苦悩に充ちた闘いが思われた。
屈辱に充ちた日々でもあった。
性器具として、敵に虐げられた絶望の過去が、ずしりと記憶に重い。いや、記憶だけではなかった。体にもその重みはある。何十人の男が体を弄んだことか。何百回となく、性器を、肛門を、そして唇を、犯された。精液のドロリとした記憶が体を埋めている。
体が腐ってしまった気がする。腐敗は内臓にもおよんでいるようだった。
その腐臭にまみれた麻紀子を迎える雪の白さが、痛かった。
(下巻 第十六章 新たな敵 1項より)

これは麻紀子一行が西独を脱出し、鬼無村に生還した際の、麻紀子の述懐です。
ここでは射精回数が「何百回となく」となっています。
この数をMAX999回とすると、91日間では一日あたり11回となり、それこそ想像を絶した回数になります。

これはあくまでも個人的な想像でしかありませんが、若くて体力のある女性がどんなに頑張っても毎日「午前中一人」「昼間一人」「夜一人」の計3人が体調を崩さないで相手ができる限界ではないかと思います。
それはただ寝ていれば勝手に男が逝ってくれるわけではなく、「お仕え」した上で、麻紀子自身も感じることを要求されるからです。

それでも「一人が一度では決して済まなかった」訳ですから、一日の射精回数が6回(一人2回ずつ)とすると、45日間で270回、2/3の61日間では366回となります。

「裸の冬」の主人公である白骨紅のように、同時に、二人や三人を相手にさせられていたことも想定されるので、200回~400回は数としてはあり得たでしょう。

捕らえられ、奴隷となっていた間は、麻紀子の口・膣・肛門には常に男根が挿入されていた(口、膣、肛門に同時挿入の上、両手で一本ずつ愛撫だとMAX5人同時)と言っても、過言ではありません。
よくぞ、心と体がもったモノです。





一人が一度では決して済まなかった。二度目は、肛門を責めるか、口腔性交を強いた。
女の体は、男にとってはあらゆるところが、性器だった。尻の割れ目だけで射精する男もあれば、後ろ手に縛られてベッドに転がされた麻紀子の両の足の裏で男根を擦り合わして射精する男もいた。
乳房で包んでそうする男もある。
女の体で性器にならないところはなかった。女は男の玩弄物としてのみ存在する。とらえられてはじめて、男の本性がはっきりわかった。
男は、女に人間としての価値を認めようとはしなかった。大切に扱うのは、性器具としてのみ、大切にするだけであった。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

ここでは、麻紀子がこれまでに受けた、具体的な凌辱内容が明らかにされています。
麻紀子が日常的に肛門性交を強いられていた事実、当然のことながら口腔性交もそうですが、ありとあらゆるテクニックを行使して男に奉仕させられていたことです。
日常的に肛門性交に使用された肛門は、オリジナルとは明らかに形状が異なり、おそらくいつも口を開けている状態になっています。
クラインは麻紀子の肛門を観察した際に、そのことに気づき、麻紀子が肛門性交の常習者であることに気づいたのです。
麻紀子が自分と同じ趣味を持っているのだと、あるいは趣味でなく強制されてだとしても、日常的にそこは性交に駆使されているのだとわかったのです。




これから、異国での闇の底にうめかねばならない生活を、麻紀子は思った。当分は、このクラインという男の奴婢にされるのであろう。好きなときに、クラインは麻紀子を裸にする。
厭きれば、だれかに払い下げられる。それは通訳のシュルツかもしれない。
心も体もボロボロになって、あげくは締め殺されるのであろう。ふいに、麻紀子は貌を上げた。
クラインはいまはあお向けになって麻紀子の股間に頭を突っ込んでいた。舌が、陰唇を舐め回し、ときに強く吸う。吸われた瞬間に、麻紀子は消え入りそうな感覚にとらわれた。クラインの口中に体が吸われてしまうような不安感であった。
不安感はするどい歓喜をも含んでいた。同時に、失禁しそうなおびえが走った。
「ああッ」
麻紀子はうめいて、思わず足をつぼめた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

クラインは相当な女好きのようですから、女性のあそこを舐めるのもかなり上手なのでしょう。そのテクニックに、麻紀子は虜にされてしまいます。
陰唇を舐め回してから、膣とクリトリスを吸われ、おもわず声を洩らしそうになって、麻紀子は顎をのけぞらせます。
このとき、麻紀子の視線は宙を漂い、その瞳には官能が浮き、半開きになった唇からはあらい吐息が漏れていたはずです。
そして、クラインの口での愛撫がつづき、麻紀子はお洩らししそうなほど感じてしまうのです。
「思わず足をつぼめた。」という表現には、もっとそこを舐めて吸ってほしいとの「麻紀子の想い」が込められており、そのため、足でクラインの顔を挟みこみ性器を押しつけたという表現になったものと思われます。

この時点で麻紀子はクラインに対する抵抗をいっさい放棄してしまいます。麻紀子の股間は既に溢れるほど濡れていたはずです。

このときの麻紀子の「ああッ」といううめき声は、読者の期待感をあおり、次の展開を予感させるキーワードになっています。
これにより、多くの読者がワクワク感というか、読者の希望通りの展開を予想したことでしょう。

そして、「異国の闇の底にうめく」という表現を用いて、麻紀子がクラインや通訳のシュルツ、その他大勢の男たちの性に仕えることばかりを考えているのがこの場面です。




クラインが、体を引いた。
裸になる気配がした。
クラインがベッドに腰を下ろして、麻紀子を手招いた。素裸になっていた。
麻紀子は這い寄った。クラインの命令はわかっていた。股間に入って、手錠をはめられた手でクラインの男根を握った。はじめてみる巨大さであった。気味が悪くなるほど、硬度がなかった。
口に含まされた。口が変形してしまいそうな感じがした。頭を上下に振って、口腔性交をつづけた。クラインはなかなかやめさせてはくれなかった。
十分あまり、それをやらされた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

クラインとは言葉は通じなくても、裸でベッドに腰を下ろした男が、女を手招く意味を麻紀子は理解しています。
口腔性交させられるときは、このパターンが多かったのでしょう。
奴隷のやるべきことを体で理解している麻紀子は、立ち上がることなく、床を這ってクラインの股間に自ら入っていきます。
クラインもその麻紀子の仕草をみて、奴隷女としてクラインの性にひれ伏す覚悟を決めたことに気づいたでしょう。
人妻でもある麻紀子が屈服したのです。
クラインの気分はさらに昂ぶったはずです。


麻紀子はクラインの男根に口腔性交で仕えはじめます。

このとき、麻紀子はクラインに男根を舐めさせられながら、何を考えていたのでしょう?
はじめは確かに「貧血を起こしそう」、「意識がずり落ちて行きそう」と、絶望感に打ちひしがれていた麻紀子でしたが、クラインの優しい愛撫に、一変します。

はじめに肛門を丹念に愛撫され、次は性器と愛撫が続き、とどめは、麻紀子自身がクラインの男根を口で愛撫することで、体はできあがってしまいます。

そして、麻紀子は男の奴隷とされていたこの数ヶ月間に、すっかり男根に馴れ、好きになっていました。
口に含んで愛撫すると、犯されているときの快感が蘇るのでしょう。
そして、クラインの男根はいままで体験したことのない巨根ですから、口に含んだときの衝撃は相当なものだったでしょう。
硬度がないことにはすぐに馴れ、麻紀子はすっかり巨根に心を奪われてしまいます。



⑬紀魅は単時日で女の奥に眠る性のすべてを引き出されることになる。
(花に三春の約あり 第三章 鷲の巣 2項より)

麻紀子の娘である紀魅に関する記述が、このときの麻紀子にそっくり当てはまるでしょう。
麻紀子は男根を口に含まされることで、濡れる体質になっていました。
巨根を挿入され痛がっていない(すんなり受け入れている)ことから、この場面でも、麻紀子はクラインに男根を舐めさせられ、一層、濡れてしまっています。

この描写以外にも、他の作品ではありますが、少なくても下記の⑭~⑲の6カ所に同様な記述があります。



⑭長い口腔性交だった。どの部分にどのていどの強さで歯を使ったらよいかを由紀は心得ている。男根を口にすることへの嫌悪感はなかった。仕えているうちに由紀自身も濡れてくる。口にしている男根がいまに由紀をつらぬく。前からか、這わされてかは、男しだいだ。由紀は忘我の境地を彷徨うことになる。
(沈黙の渚 第四章 凍土ツンドラ 5項より)

⑮由紀は跪かせられた。男に突きつけられた男根を由紀は、口にした。
口にしているうちに、由紀は欲望をおぼえた。衝き上げるような欲望が湧いてきた。堪えがたいはげしさであった。
由紀はその場に這った。
「おねがい!犯して」
懇願した。
(ふたたび渚に 第五章 魍魎 6項より)

⑯半勃起状態の男根が目の前にある。紀魅は口に含んだ。
口腔性交をつづけているうちに硬度が増して膨れ上がった。
ニールは傲然と突っ立ったままだ。
紀魅は半分も口に入らない男根を相手に口腔性交をつづけた。
できることなら、ニールを殺したい。やってできないことではない。口腔性交をつづけながら睾丸を握り潰せばよい。倒れたら羽化真人に教えられた蟷螂拳法で喉を突き破れる。
しかし、いざニールの前に跪くとそれができなくなる。殺意が失せる。ニールに犯されることのみを思う。犯されはじめるとたちまち狂瀾状態になる。黒人さまの男根さまと、口走ることになる。
それだけの威力を秘めた男根であった。
口にしているいまもすでに炎は取り憑いている。
ジョディにしても同じだ。あえぎながら肛門に舌をさし入れている。紀魅とジョディはニールの奴隷になりきっていた。いかなる屈辱にも堪える。屈辱は炎と化す。偉大な支配者であった。
ニールの男根には、女同士の性愛を粉微塵に打ち砕くだけの魔力が秘められていた。尊いのは男であって女ではないことを紀魅もジョディも悟らざるを得なかった。
女同士では失神するまではいかない。ニールは無造作に眠らせてくれる。
(妖しの花乱れにぞ 第三章 フロリダの恥部 5項より)

⑰紀魅は瞳を閉じてイワーノフの男根を口に含んだ。
口腔性交をつづけた。
つづけているうちに汚らしさは消えた。紀魅は自身の膣が濡れているのを知った。
紀魅はベッドに上体を投げ出していた。
イワーノフが巨きな男根を背後から挿入して責めている。
ああッと、紀魅は声を洩らした。
(花に三春の約あり 第三章 鷲の巣 2項より)

⑱黒人が裸になった。極度に黒人は昂ぶっていた。異様に大きな真黒い男根が天を衝いている。血の気の失せた貌で左菊がそれをみている。蛇への恐怖が残っているがたちまち左菊に女本来の犯される炎が取り憑く。最初の相手は黒人だ。いまの麻里がみても心臓が締め上げられるようなすさまじい男根であった。麻里は黒人の男根に眸を瞠ったことをおぼえている。
黒人でそれも異様なほどの男根を持った黒人にその男根ゆえに屈服するのだと思うと麻里はそれだけで濡れた。
麻里は黒人に跪いた。口にして使えた。黒人はそれを傲然と見下ろしていた。意のままだった。這えといわれれば這ってお尻を差し出した。背後からの男根の責めにあえぎ、叫びつづけた。黒人の男根の岩乗さに精神を奪われた。大小は問題ではないというがそれはウソだ。岩乗なもので犯されるのでなければホテルの廊下も便所も意味をなさなかった。
鉄抗から解かれた左菊が突っ立った黒人の股間にしがみつくようにして男根を口にしている。
(頽れた神々 第一章 罌粟の都 4項より)

⑲紅は、口に含んだ。女のしなければならないことは紅は心得ていた。口に含まなければマルカーンは承知しまい。男根を必死になって口に含むのを見下ろすことで男は制服本能を味わう。
数分間、マルカーンがもうよいというまで、紅は口で愛撫していた。
その頃には紅の心に変化が生じていた。
女の性が屈辱を抑え、男の凌辱を待つ昂ぶりが生じはじめていた。口にしたものが逞しく思えはじめていた。口いっぱいになっているものがいまに紅をつらぬく。そのときの感触がすでに脳裡に渦巻いていた。嫌悪しかなかったマルカーンの巨大な軟体動物に似たものが、尊く思えはじめていた。
(裸の冬 第二章 アラーギ族 4項より)


すべてに共通していえることは、「男根を舐めさせられているうちに濡れて、したくなってくる」どの女性も、充分なる男性経験を積んで、体が馴れている(体が快感を憶えている)場合でしょう。
とくに、全員が性交奴隷として飼われている場面の描写なので、この傾向はとくに顕著です。

ここで麻紀子は十分もの間、口腔性交をさせられます。
つまり、読者にも麻紀子にも、クラインがかなりの遅漏であることが、これでわかったのです。奴隷女を存分に満足させられる男だということが読者のみならず、麻紀子にも伝わりました。

これで、いよいよ読者の期待感が最高潮に達する状況になりました。




突然、クラインが体を離した。麻紀子は床に這わされた。さっきと同じ格好だった。
クラインの男根が尻にあてがわれた。しばらく擦っていて、ゆっくり押し込んできた。
麻紀子は背をそらせた。臓腑にあたりそうなところまで、それは届いていた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

ここで注目すべくは、麻紀子は巨根を痛がらず、すんなり受け入れている点です。
性器と肛門への愛撫、及びそれにつづくクラインへの口腔性交での奉仕によって、麻紀子は相当に濡れていたのです。
このあとの衆人前のレイプのときは、麻紀子はクラインの巨根の挿入時には、苦痛に貌をゆがめています。

麻紀子の尻をみて、クラインは麻紀子が股間をひどく濡らしているのがわかりました。
早く入れてほしがっていることにも気づきました。
それでわざと尻の割れ目で男根をしばらく擦り、挿入せず、焦らしたのです。

記述こそ無いものの、麻紀子がそれに堪えられず、自ら足を拡げて濡れた性器を差し出す仕草が、この場面に想像できます。

そして、こちらも記述こそ無いものの、その巨大な存在の挿入に、麻紀子が思わず大きなうめき声を洩らしたことも想像できるでしょう。
それは竹生島で倉田に凌辱された場面をみればわかります。
夫の前での凌辱とはいえ、麻紀子は倉田に後背位で犯された瞬間、快感のうめきを洩らしました。
作中に、倉田の男根のサイズについての記述はありませんが、初老と表現される倉田恵治の男根は白人男性と比べて大きかったとは言い難いでしょう。
その倉田より遙かに大きな男根が挿入され、挿入感はかなりのものだったに違いありません。倉田の時は「低い声を洩らした」程度でしたが、このときは「大きなうめき声」を放ったと思われます。



(21)由紀は男に両足を担がれた。体を折り曲げて男が挿入して来た。由紀は歯を喰い縛った。その瞬間には男根のことしかなかった。征服されるよろこびの心のうめきしかなかった。由紀は男にしがみついた。ああ、おとこさまと、由紀は胸中で叫びを放っていた。
(風の渚 第四章 謀略の墓場 4項より)

まさに、このときの麻紀子もこの由紀と同じ状況だったはずです。

手錠をはめられた両手を床に突っ張り、貌を床につけ、尻を高々と掲げ、クラインに差し出している。尻を抱えられて逃げ出すこともできず、背筋をのけぞらせ、お腹いっぱい、膣一杯に巨根を受け入れている。巨根からもたらされるあまりの快感に、その美貌を激しくゆがませ、歯を喰い縛っても、大きなうめき声を洩らしてしまう。

このときの麻紀子の様子はこんな感じでしょうか。



(22)
クラインはしきりに何かをいっていた。何をいっているのかは、わからない。両手で麻紀子の尻を抱えていた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)


この場面でクラインがいっている台詞は、おそらく「麻紀子の名器」についてではないかと想定されます。
詳しくは既述しておりますので省略しますが、名器と一言でいっても3パターンあり、(1)サイズ(いわゆる「きつい」)、(2)締まり(いわゆる「キュッと締まる」)、(3)感触(いわゆる「数の子天井」)の中で麻紀子が明確に当てはまるであろうパターンは「(2)の締まり」でしょう。
(1)は麻紀子の身長がそこそこ高かったことを考えれば可能性は高くなく、(3)については当てはまりそうな描写がありません。
男根の鈍感な部分でも(2)ははっきりわかりますから、巨根の西欧人にでもわかる「名器」となれば、麻紀子は(2)の名器の持ち主だったと、いってもよいかも知れません。

繰り返しになりますが、西村先生は他作品においても「欧州女のあそこはガバガバで、使い物にならん」と述べられています。



西村作品は男性の性器描写が中心で(立派とか巨根とか)、いわゆる女性の「名器」表現は本作以外にはほとんど見あたらないのですが(詳細分析は「峠に棲む鬼「イラスト分析22」・・・麻紀子は処女だったのか(中編)」参照)、有名なものを挙げてみます。

(23)坂田はふるえる声でそういいながら、暗い中で杉野静子に這い上がり、馬乗りに跨った。すぐに天国がやってきた。。ものの一分ともたなかった。絶品だと坂田は思った。どこもここもが密着して隙間がなかった。しめりを帯びた肉に包まれただけで、果てるかと思われた。
(汝!怒りもて報いよ 第二章より)

(24)高右衛門は喘いだ。足りない女だけに遠慮がなかった。吸いつづけるさいを見下ろした。
やがて、さいを押し倒した。
じきに、はてた。吸い取るようなさいの膣であった。さいは、締めて、体をふるわした。
(血の翳り 第三章 系譜 2項より)

このように、本作以外にはほとんど「名器」表現が見あたらないのはなぜでしょうか。
ひとつの推測ですが、西村作品の大部分は男性の登場人物が主役であり、女性はサブに甘んじています。
性交においても、基本的には男性が女性を責める描写が多いです。
ここで女性が名器だと男性がすぐに逝ってしまい、性交の主導権を男性がとれなくなってしまう為、そのように極端な表現になっているのではないでしょうか。
とくに(23)は状況的には全くそのような推測を補完する状況での場面になっています。


さて、麻紀子は後背位で犯されて感じてくると、尻が上がり、左右に振る癖があるのがわかっています。


(25)しだいに麻紀子の反応が昂ぶっていた。尻が上がっている。それをかすかに左右に振っていた。
(下巻 第十章 多国籍企業 1項より)

(26)紅は尻をマルカーンの腹に押しつけた。小さく左右に振った。
マルカーンが短く吠えて、射精した。
(裸の冬 第二章 アラーギ一族 4項より)

(27)お尻から責められながらもだえ狂ってみせた。実際にいきもした。何人もに責められているうちに堪えがたくなることがあるのだった。犯している少年にしがみついて尻を打ち振った。真澄がいくと少年どもは喜んだ。
(死神 ザ・デス 第二章 性交地獄 1項より)

「裸の冬」や「死神」でも同様な表現があります。
おそらくこのときの麻紀子は、倉田恵治に犯されたときの自身や白骨紅と同様、尻をかかげて、クラインの腹に尻を押しつけ、左右に打ち振ったことでしょう。

このときは、麻紀子もクラインの男根のすばらしさに夢中になっています。「ご主人様の味」をもっと味わいたくて、尻を打ち振りながら膣を締めたのでしょう。

天性の名器ぶりに加えて、そこを思いっきり締められて、遅漏のクラインも驚愕したに違いありません。
そして、このつぎの瞬間から、膣の感触を味わうかのように、クラインはゆっくりと麻紀子を責め立てはじめます。



(28)
スローモーな突きたてがはじまった。
麻紀子は肘をついた。
快感が、体を侵しはじめていた。
それは抑えることのできないものであった。抑えも耐えもできない快感が、性器を中心にして、湧き上がっていた。脳裡にも黒い炎が燃え転がりはじめていた。ああッ、ああッ、と麻紀子は叫んでいた。女は男の、人間は人間の奴隷になり得る生きものだということを、麻紀子は歯を喰いしばりながら、思っていた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)
既述の、

「麻紀子は背をそらせた。臓腑にあたりそうなところまで、それは届いていた。」

という文章と、

「女は男の、人間は人間の奴隷になり得る生きものだということを、麻紀子は歯を喰いしばりながら、思っていた。」

というこの文章にはつながりがあります。

臓腑とはいわゆる五臓六腑のことで、頭に近いところの臓器では心臓や肺臓、胃などがあり、人間の大事な内臓を一言で表す言葉です。

そして麻紀子の述懐をひもとくと、”クラインの巨根は、(背をそらせても)胃にあたりそうなところまで届いているように感じられた”とのことですので、つまりは、このときの麻紀子は”巨根で膣から胃までを串刺しにされ、五臓六腑のすべてをクラインに支配された(と感じた)”と状況だったのでしょう。
それは麻紀子にとっても初めての、衝撃的な経験でした。

そしてこのことが、後述の”奴隷になり得る”という文章につながるわけです。

これ以降、麻紀子の脳裡には倉田恵治や中垣明に入れ替わり、ヨーゼフ・クラインが”ご主人さま”として君臨します。

ここでは、体の支配は「快感が、体を侵しはじめていた。」という表現で、精神の支配は「脳裡にも黒い炎が燃え転がりはじめていた。」という表現が表しています。
身も心も屈服し、すべてを支配される麻紀子。
それを西村先生は「ああッ、ああッ、と麻紀子は叫んでいた。」という文章に表現しています。このときの麻紀子に許されたほんのわずかな自由は、犯される快感を声に出して叫ぶことだけだったのです。

それに続く「麻紀子は歯を喰いしばりながら」という表現ですが、これほどこのときの麻紀子の様子を表す具体的な描写は他にありません。
このとき麻紀子は「歯を喰い縛って」いたわけですから、白目を剥くほどの快感にその美貌を激しくゆがめていたのでしょう。
この表現によって、麻紀子のみならず、読者の期待感もこのとき絶頂に達します。この期待感は、読者の期待を裏切らない最後の一文に結集されていきます。



文字通り、クラインの奴隷となった麻紀子は、クラインの望むままに、感じ、泣け叫び、逝かされるしかありませんでした。
絶世の美女でありながら、名器の持ち主でもある奴隷女がおのれの男根に屈服し、悶えまくり、うれし泣きしながら昇り詰める様子を見て、クラインは征服欲を満たし満足したことでしょう。

つまりは、この瞬間に”期待感”を満足させていたのは、「読者」のみならず、「麻紀子」であり、「クライン」でもありました。
驚異的にも三者を同時に満足させる、西村ワールド全開の瞬間でもありました。



この”クラインとのセックス描写”をひもとけば、麻紀子が「巨根」好きであることが明確に記述されています。
中垣明や倉田恵治に犯され、逝かされたとき、あるいは、のちの夫となる真庭正之とセックスしたときにすらない、男根に対するこまやかな描写や巨根に犯されているときの被虐的な描写です。
いままでの麻紀子は、精神を支配されたことで、犯され感じていました。
しかしこのクラインに限っては男根そのものが素晴らしいがために、精神の支配とダブルの快感に麻紀子は襲われています。
そして、つらぬかれた巨根から生じるあまりの快感に、麻紀子は奴隷になることを心の底から願ったというわけです。

そしてこの麻紀子の想いは、本項の最後に一文に結実することになります。

妻のために命がけで闘っている夫を差し置いて、初めは強要されたとはいえ、妻は巨根のドイツ人とのセックスを堪能しています。
竹生島に監禁されていたときも、麻紀子は夫の真庭に見られながら、倉田の男根を舐め、尻の穴を舐め、最後には後背位で犯されて、うれし泣きしながら、いきまくっていました。
貞淑だと思っていた妻が、実は「男根大好きの弩淫乱女だった」姿を見せつけられるは、「目の前でたっぷり中出しされる」場面を見せつけられるは、夫からすれば、たまったもんではないですね。



(29)
その瞬間、クラインの男根がどうにもならない尊いものに思えた。
(下巻 第十二章 西独 4項より)

既に紹介済みですが、最後の

その瞬間、クラインの男根がどうにもならない尊いものに思えた。

は、特選と東スポでは文章そのものが異なっています。

<東スポ>
その瞬間は、クラインの男根がどうにもならない尊いものに思えた。
<徳間ノベルズ>
その瞬間は、クラインの男根がどうにもならない尊いものに思えた。
<徳間文庫>
その瞬間、クラインの男根がどうにもならない尊いものに思えた。”
(※理由推測:東スポ、ノベルズ共に「は」が有ることから、徳間文庫版は編集ミスと思われる。ちなみに、「は」が有ると無いとでは文章の意味が大きく異なってくる。文庫版では、「どうにもならない尊い思いがその瞬間に訪れた(麻紀子が いったとも受け取れる)」訳だが、東スポ版では「今だけクラインの男根が尊く思えた」ことになる。それまで気持ちが悪い対象だったクラインの男根がいまは尊く感じる」ということ。ここにも女性の内面をきめ細かく表現したい、西村先生の意志が現れているのがわかる)






麻紀子はクラインに強姦されているにもかかわらず、巨根を痛がらずすんなり受け入れ、すぐに大きな喜びの声をあげています。
「女は男の、人間は人間の奴隷になり得る生きものだということを、麻紀子は歯を喰いしばりながら、思っていた。」という表現は、麻紀子が男根に屈服し、心底から男の奴隷になりたいと考えた瞬間(自我が崩壊した瞬間、あるいは心身とも奴隷に堕ちた瞬間、死ぬまで奴隷でいることを受け入れた瞬間)でもありました。

そして、最後には「男根がどうにもならない尊いもの」=「女にとっての宝・かけがえのないもの」=「奴隷にとってのご主人さまそのもの」と考えるに至りました。
これは麻紀子の精神がクラインの男根に屈服した瞬間でもあり、肉体的にも絶頂に昇りつめた瞬間でもありました。

これ以降、逢魔麻紀子は西独都市ゲリラに救出されるまで、脱出や抵抗など(クラインの殺害を考えることすら)、いっさいの反抗を諦め、男たちの性に仕える事だけを考える性交奴隷になり切るのでした。



最後までの描写こそありませんが、クラインはこのあと、麻紀子を死ぬほどよがらせ、泣き叫ばせ、何度も逝かせたことでしょう。
いつまでたっても逝ってくれないクライン相手に、麻紀子はその巨根のすばらしさを大声で訴え、おのれが屈服することを何度も訴えたことでしょう。
そして、最後には失神にまで追い込まれたのは、いままでの展開からして間違いありません。

クラインは失神して意識のない、そんな麻紀子の膣に悠々と射精をしたのです。

真白くて美しい裸身が意識を失い目の前に横たわっている。
その意識を失わせたのはおのれの男根の威力。
意識のない美しい女は膣に大量の精液を含んだまま、そこを痙攣させています。
クラインがその気になれば、この美しい女はいつでもこの姿をさらすのです。



この征服感、満足感が、やがてエスカレートし、それだけでは事足りず、のちの激しい虐待につながっていきます。



余談ですが、西村作品の中でとくに初期の頃の作品は、かなりのリアリティーを追求しており、それは女性が凌辱されるシーンにも見受けられます。

例えばこの「峠」では、
(30)女は、犯されるにしても性器に変化はない。それに、犯されることに快感は感じない。男はちがった。
(上巻 第三章 鬼との対決 3項より)

と、麻紀子の感想を引用する形で、「女はただ凌辱されただけでは気持ちいいと思わない」と明確に述べられています。そして、その後の凌辱場面で、麻紀子が感じてしまったときには、その前からの詳細な描写により、麻紀子が精神的に屈服され、その後、肉体も順に征服されていく課程が記載されています。

初期作品と、それ以降では作品全体のテーストがかなり異なる為、一概に比較はできないのですが、このあたりの細かなリアリティー追求(ただエロイからと言うことではなく)が、「個人的」に非常に興味の引かれるポイントです。
皆さんはいかがでしょうか。



イラストは(1)「クラインにパンティを脱がされ、全裸にされる麻紀子」、(2)「クラインに後背位で犯される麻紀子」を描いたものになります。
イラスト(1)の麻紀子はクラインにパンティを脱がされる際、抵抗するようにクラインの手を押さえており、上体がつんのめり、逃げ出すような仕草をしています。
本文中では無抵抗で全裸にされた麻紀子ですが、安岡旦先生のイメージでは「嫌々ながらに脱がされる麻紀子」と「その抵抗を愉しみながら、麻紀子を脱がしていくクライン」が強かったのだと思われます。
イラストのクラインは赤ら顔に描かれ、麻紀子の抵抗を愉しむように卑猥な表情を浮かべています。

(2)のイラストではクラインが後背位で麻紀子を犯しながら、鋭い目でその様子を観察している情景が描かれています。
麻紀子は上体を床につけ、尻を高々とかかげクラインに性器を差し出し、ご主人さまたるクラインに完全屈服しています。
その麻紀子の様子を見ながら、満足げに犯しているクラインの様子が描かれているのが本イラストです。
Scan10154-1.jpgScan10155-1.jpg
★著者:安岡 旦 福田隆義
★販売元:東京スポーツ新聞社 スポーツニッポン新聞社
★この画像は、作者、出版社などの原権利者が著作権を保有しています。
★この画像は、純粋に作品の紹介を目的として、引用しています。
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