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風は悽愴「イラスト分析」・・・全裸11 [風は悽愴]

本イラストはカッパ・ノベルス版「風は悽愴」の表紙に使用されているものです。
巨大なオオカミの顔が中心にあり、本作を手に取った読者をじっと見つめています。
大変な迫力です。
その手前には紀州犬が横を向いて立っているのが、小さく描かれています。
作中では、オオカミはゴロ、紀州犬はシロと呼ばれていました。
どちらも強盗犯・疾風の徳造が飼っていた獣です。
物語はゴロを中心に、徳造。徳造の弟分である安と秋。猟師の源蔵。静岡警察署の志乃夫警部などが登場します。

イラストの女性は全裸で、紀州犬と正対して読者に背を向けて描かれています。
余計な脂肪のない、引き締まった背中が印象的です。
女性は狼や紀州犬から顔を背けるように右を向いており、引き締まったウエストから豊かな尻に至るなめらかな曲線が非常に美しく描かれています。

さて、作品のあらましはこうです。
時は大正九年八月。
強盗犯・疾風の徳造は、仲間たちの残虐ぶりに嫌気がさし山中に隠れ住んだ。安と秋は強盗先に女がいれば必ず犯し、抵抗する者は必ず殺されたからだ。
山中で徳造は一匹の仔犬を拾ったが、実はこの仔犬は最後の日本狼だった。
オオカミは成長し、ある日、徳造の許を仲間を求めて去っていった。
その狼を妹の仇と狙う猟師の源蔵。源蔵の手から狼を救おうとする徳造。徳造逮捕に執念を燃やす志乃夫警部。そして徳造の金を狙う、かつての共犯者たち。
一匹の狼を焦点に、赤石山脈から伊吹山地へと、それぞれの執念と命をかけたまんじ巴の追跡劇……。そして、彼らを待つ、凄惨な修羅場が…。
という感じです。

猟師の源蔵は、とある瞬間からゴロを狙うのをやめ、守る立場に変わります。
それはあたかも、西村先生があるときからハンティングを否定した事実とダブルものがあります。
推測ではありますが、西村先生は本作に猟師の源蔵として登場することで、メッセージを発信したかったのではないかと思います。

さてイラストですが、作中には他の西村作品に登場する魅力的な女性ヒロインは登場しません。
本作の主人公はゴロであり、それを取り巻く主なキャラクターも男性ばかりです。
そうした中で、西村先生の代理人である猟師の源蔵と絡みのある女性が「第三章 三つの牙」に登場します。
その女性の名は朱美。
色白の二十九歳になる女性で、未亡人です。
二人が肉体関係を結んだことが縁で、夫を殺したイノシシの敵討ちを源蔵にしてもらうことになります。
この朱美がイラストに登場している女性とも考えられますが、もう一つの考えとして、裸の女性は「銃がなければ無力な人間」を表しているのではないかとも考えています。
安と秋を懲らしめるのもゴロですし、彼ら(人間)はゴロ(狼)には無力です。
ゴロと紀州犬、全裸の女性の大きさの違いが、作中の存在感を表しているのではないかと、作品を読み終えたのちに、改めてイラストを見た時に感じた感想でした。
本イラストも、本作も非常に心に訴えるものがある傑作ですので、まだご覧頂いていない方には絶対のお奨め作品です。
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★著者:後藤一之
★販売元:(株)光文社
★この画像は、作者、出版社などの原権利者が著作権を保有しています。
★この画像は、純粋に作品の紹介を目的として、引用しています。
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風は悽愴―長編サスペンス小説 赤石山脈四つの対決と欲望の暴発 (カッパ・ノベルス)

風は悽愴―長編サスペンス小説 赤石山脈四つの対決と欲望の暴発 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 西村 寿行
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1981/04
  • メディア: 新書



風は悽愴―長篇サスペンス小説 (1981年) (カッパ・ノベルス)

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  • 作者: 西村 寿行
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