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峠に棲む鬼「イラスト分析22」・・・麻紀子は処女だったのか(前編) [峠]

今回ご紹介するイラストは、「峠に棲む鬼」徳間ノベルズ版「第三章 鬼との対決(東スポ版では第三章は「痕跡」となっている)」になります。
以前、別の機会にご紹介したのですが、場面説明のため、改めてご紹介させて頂きます。



<今回の議題>
「関東製薬の組織に拉致された逢魔麻紀子は、はじて凌辱されたとき、処女だったのか?」という議論が以前、ネット上にありました。


<問題となった記述>
中垣は麻紀子の尻を抱えていた。麻紀子は顔を床につけ、耐えていた。両手を離してほしかったが、それはかなわぬことだった。おそらく、麻紀子が杖術を会得しているのを知っているのだ。
はげしい痛みが股間をつらぬいていた。躱すことも、這って逃げることもかなわなかった。中垣は完全に挿入して、万力のような力で麻紀子の尻を抱えていた。
中垣は、ゆっくり動いていた。動くたびに麻紀子はほおを床で擦られた。性の快感は消えていた。無理な姿勢が、苦痛を限度近くに押し上げている。
「ゆるしてッ、おゆるしになってッ」
麻紀子は思わず悲鳴を上げていた。
中垣は悲鳴を歯牙にもかけなかった。
(峠に棲む鬼 上巻 第二章ライター 4項より)

ここに「はげしい痛みが股間をつらぬいていた。」とあり、それがこの議論の元になった記述です。
「峠に棲む鬼」の表現解釈であるため(ネット上では一応の決着がついたようですが)、この場を借り、当方の解釈を述べさせて頂きたいと思います。



<逢魔麻紀子とはどんな女性か?>
まずその前に、「麻紀子がどんな二十五歳の女性であったのか」を改めて文章中より、まとめてみました。


報道記者も含めて十二人の男が、麻紀子をみつめた。男にみつめられるのは、麻紀子は馴れていた。
(上巻 第一章消えた村 2項より)

麻紀子はいつも男の視線にさらされ、見つめられることに馴れていました。
おそらくは、物心がついた頃から、男の視線を意識してきたのでしょう。
麻紀子の実体験を語る形で、ずばり断定していることからも、麻紀子が常日ごろどのような状況にあったかが、この文章からも推察されます。



その他にも、そのことを記述した箇所がいくつか存在しています。


麻紀子が相手になると、中垣は体の中に電灯がついたように、急に明るく、熱っぽくなったのがわかる。
中垣の視線が麻紀子の横顔を、胸を、そして妄想の中で麻紀子を裸にしているのがわかる。中垣は思いもかけない獲物になかば錯乱気味であった。
手折れるかもしれない美しい女に、のぼせてしまっていた。
(上巻 第二章ライター 3項より)

このときの中垣は演技でした。
しかし、麻紀子を拉致して犯したいと考えていたことは事実でしょうし、その思いがあったからこそ、麻紀子は過去の男たちとの反応違いを見抜けなかったのです。
中垣の例は例外ですが、数多くの男とのさまざまな経験をし、その積み重ねが二十五歳の麻紀子を形成しています。




倉田の視線がねばい。
倉田は麻紀子の面倒をみたがっていた。別のことばでいえば妾である。家も建ててやるという。なんどか打診されていた。
倉田恵治の視線が、逢魔麻紀子の胸から腰にそそがれていた。
視線が麻紀子を裸にしていた。麻紀子には男の渇望のはげしさはわからない。ただ、この倉田の前に裸身を横たえることはないであろうと、それだけはわかっていた。
(上巻 第一章消えた村 4項より)

ここでは、社長の倉田から何度も「お誘い」があったことが述べられています。
自分が勤務している会社の社長から、一軒家(いっけんや)のプレゼントと引き替えに愛人になるよう何度も迫られるほど、麻紀子は美しいのです。
もちろん関東製薬は一流企業であり(おそらく一部上場企業)、その社長が物色しているのですから、都内(それも高級住宅街)の新築一戸建ては間違いなく(文中では「豪邸」とされています)、女性として「億」の価値があることは間違いないところです。
そして、この魅力的な申し出を問答無用で却下するほどですから、麻紀子には社会的地位や資産のあるさまざまな男性陣が群がっていた(モテモテ状態)のだと、推測することができます。




真庭正之は視線を戻して、逢魔麻紀子をみた。蒼然とした歴史に囲まれ育ったにしては、現代感覚に溢れた女だと思った。容貌が知的にととのっている。網膜に裸身が残っていた。あお向けに倒れた裸身が。みごとに伸びた足だった。白い太股から尻に向かっての盛り上がりが消えない。
閉ざされた八百年の歴史が生んだ美しさがあった。
(上巻 第二章ライター 2項より)

麻紀子の魅力は、真庭の記述からも読み取れます。
「タクシーの運転手風情には、手さえ握ることのできない女。億の価値がある、現代感覚に溢れた美しい女」
それが本作の主人公、逢魔麻紀子なのです。



この他にも、文中では

<上巻>
(1) 中年の運転手だった。バック・ミラーの中でさっきからしきりに麻紀子を窃み見していた。
(2)「お客さんのように美しいかたが、こんな山奥の村に生まれたとは、ふしぎですね」
バック・ミラーに面長の白い貌が映っている。彫りが深かった。双眸に湖のような静けさがみえた。お世辞ではなく、本心から運転手はそう思った。
(3)車窓に向いた横顔の、すこしばかりしゃくれ気味の鼻筋が、運転手に自分の氏素性や不運を呪わせた。
(4)麻紀子はジーンズ姿であった。背丈がある。すなおに伸びた足が微風を切った。
(5)兵頭はいきなり麻紀子のような女に遇ったことに、呆気にとられるというか、とまどっていた。
(6)いまはおまえの体を賞味しよう。すばらしい体だ。
(7)この美しい体をこんなふうに弄ばれるとは、想像もしなかった。
(8)殺すには惜しい体だ。とうぶんは弄ぶことになる。
(9)処刑される前に、あの男と同じように、この美しい尻を抱いてはどうだ。
(10)わたしは、君の尊い体がー
(11)真庭は麻紀子の貌を覗いた。街灯の明かりに大きな瞳が炯っていた。仔猫の眸を思わせる炯りであった。
(12)「世話のやけるお嬢さまだ」
(13)「そう。饗応にあずかってはならんと、厳命されている。女の体も、そのうちに入る」
(14)乳房と尻に生命力が盛り上がっていた。凝脂の肌だった。
(15)そのとき、真庭はおのれが死に直面していることも忘れて、麻紀子の尻を無性に美しいと思った。
(16)すらりと伸びた下半身だった。
(17)おまえの、そのすばらしい体を、牡猿が犯すのだ。
(18)つねに、猿に四つん這いにさせられて、そのきれいな尻を、犯される
(19)男は裸をみせろと命じた。麻紀子は男の前に立って、前と後ろをみせた。
(20)おまえほど、きれいな奴隷はいない。猿の女にするのは、惜しい。
(21)すばらしい体だ。太股も、尻も……
(22)わたしは、君が好きだ。君は美しい。その肢体の美しさの前に、わたしは永遠にひざまずいていたいくらいだ。
(23)惚れて惚れぬいた女を、これからはどんなにでも弄べるのだと思う昂ぶりがあるようだった。
(24)わたしは、君にどんなことでもする。生涯、君に尽くす。君は豪壮な家に住み、世界一周でもなんでもできる
(25)自由にできる美しい女奴隷がいるということに、妖しい昂ぶりが湧くようだった。
(26)「きれいだ」
  坂本がうめいた。
(27)「ああ、きれいな、お尻だ」
  坂本が、またうめいた。
(28)薄明かりの中で麻紀子のゆたかな尻が小刻みに突き上げている。真白い尻だった。すばらしく伸びた足が森中の目の下にきていた。膝を突いた、そのふくらはぎに力がこもっている。冷たくて、陶磁器に似た足だった。

<下巻>
(1)麻紀子は背を向けている。若さを示す背筋の凹みが、尻の豊かさが、目の前にある。
(2)それに、女に興味があれば、とびきりの美人を与えよう。
(3)六人の中では、麻紀子がずばぬけて美しかった。どうせ抱くのなら、容貌肢体の美しい女がよかった。
(4)新納がはげしく腰を使った。
  「とても、美しい体だ」
  新納は、はてていた。
(5)新納は麻紀子の耳に口を寄せた。
  「あなたは、美しい」
  その声は大きかった。
(6)わたしは、麻紀子さんに惚れていた……
(7)竹生島で、奴隷の麻紀子を抱いたことを思いだした。鍵を造るためではあったが、手錠をはめられた麻紀子を抱いた。なぜか、そのときの感触が思われた。すばらしい体だった。いままた、その体が凌辱されようとしている。
(8)クラインは、素裸にした麻紀子を立たせたまま、すこし離れて、観賞した。前から、そして後ろから。
(9)麻紀子は背をそらせた。臓腑にあたりそうなところまで、それは届いていた。
クラインはしきりに何かをいっていた。何をいっているのかは、わからない。両手で麻紀子の尻を抱えていた。
(10)麻紀子はふつうの女とはちがう。武芸者である逢魔高時の娘だ。杖術の奥義を会得している。気性もそれなりに強い。
(11)麻紀子は失神しかけていた。体中に青黒い筋が走っていた。筋は、豊かな乳房にもある。
(12)欧州の女にはない肌理のこまやかな、なめらかな肌だ。殺すことも犯すことも、好きほうだいにできる肉の女。
(13)「鰐に喰わせるのは惜しい女だと、そういっているんだ」
(14)日本女の性器のすばらしさについて、あけすけに喋っている。
  消音拳銃がなった。
  日本女の性器の話がとだえた。
(15)同じとらえるのなら、中垣は麻紀子にしたかった。あの体が、また抱ける。
(16)麻紀子は、野萩広子の傍にうつ伏せた。
「二人とも、なんともいえねえすてきな尻だぜ」
 だれかが、笑った。
「そう、みごとな尻だ」
(17)「おめえの体は、たっぷりと抱いた。いい尻だったぜ。
(18)陽が麻紀子の裸身の影を長くひいている。
均整のとれた、美しい肢体だった。陽にくるまれて、肌の生ぶ毛が明るい金色に輝いていた。
(19)麻紀子は無言だった。裸身が動いた。白い尻の隆起が陽の中で動いた。髪が躍った。豹のように麻紀子は草原を疾っていた。
(20)髪と乳房が躍っていた。陰毛がはげしく動いている。白い裸身が迫っていた。豊かな腰だ。
(21)死を前にして、杉本は麻紀子を、ふっと、神格化した。裸身が、この世のものではないような気がした。

と、今回、説明用に取り上げた記述以外に、上巻で28、下巻で21の、麻紀子の容貌肢体を褒め称える記述が散見されます。
1.美貌の持ち主、2.豊かな乳房、3.美しい体、4.美しい尻、5.すばらしく伸びた足、6.肌理のこまやかな、なめらかな肌(凝脂の肌)、7.名器の持ち主、8.均整のとれた美しい肢体、9.白い裸身、10.はげしい気性  等、数え上げたらきりがありません。

日刊紙を途中から見た読者にも、スムーズに内容を理解させなければならないということもあるのでしょうが、逢魔麻紀子が「西村寿行作品」史上、空前絶後、究極の「いい女」であることが、この記述数からも読み取れるでしょう。


<逢魔麻紀子とは・・・まとめ>
体術や武術を学んでいて、強い。それなりに気性がはげしい。美貌。抜群のスタイル。豊かな乳房と尻。背が高い。長い足。色白で肌がきれい。名器・・・。

映画で麻紀子を演じてほしい女優さんを強いてあげれば、「米倉涼子」かな・・・(あくまで、個人的見解です。ファンの方、すみません)。


長いので、後編へつづく。

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